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Monochrome

とある深夜の路上にて

 頭の中がぐるぐる回る。世界が回る。僕も目を回されないよう、同じ方向へ回転した。すると、余計な吐き気が僕を襲った。回転をすぐにやめ、膝に手をつく。胃液がそこまで来ているらしく、息をするだけで嗚咽した。そして、自分の馬鹿さ加減に泣きたくなった。
 そんな僕を風が優しくなでる。優しくて冷たくて気持ちのいい空気が僕を包む。少しだけ、不快さが収まった気がした。ついでに、泣きたい気持ちも。
「もう地球さんに心配はかけられないぞ!」安定しない足を無理矢理動かす。
 足は割と素直で優秀なやつで、僕をきちんと精確に運んでくれた。これでわかっただろう。悪いのは足じゃない。上に乗ってる僕が悪いんだ。こんなヤクをやっていそうなやつなんて、酔っぱらいにもいないぞ。そんな奴をのせているなんて、なんて健気な足。今度、給料──給料と言うと僕が上司みたいになるけどそんなつもりは毛頭ない──の代わりとして、足つぼマッサージにでも行ってみようかな、と思った。
 そうして、足への労りの心を捧げていたらからか、気づかなかった。車の走る音が僕のすぐ後ろでなっている。すぐそこまで迫っているのなら大変だ。この狭い道は多分僕をよけることができない。僕の命は一つだけのオンリーワンだ。大抵の奴は、キノコで増えたり、風船で増えたり、あまつさえ『1UP』なんてよくわからないことが書かれているプレートをとるだけで増えてしまう。だが、僕はさっきも言ったようにオンリーワンだ。世界に一つだけの僕だから。唯一神僕の命は命に代えても守らなきゃいけない。
 いや、自分自身を命に代えて守ったら、結局死んでしまうじゃないか。やめろ、不吉だ。もう守らなくていい。え、結局死ぬじゃないですか。僕に助かる術はなかったらしい。全て自己完結なんだけど。
 いや。そういや件のコマーシャルであったな。「終わりじゃない!」物語には続きがある、って奴。つまり。僕は輪廻転生をし、またこの人生の続きを歩んでいくんだ。強くてニューゲーム。駄目だ、セーブ引き継ぎに失敗したらヤバい。これって、割と結構な確率で冒険の書が消えるんじゃないか?気づいたら消えていて……って相当もろいぞ、メモリーカード。某トラウマ音楽が流れても笑えない。
 話が逸れた。この辺がキモオタと罵詈雑言の嵐が常に直撃している理由だろう。どうでもいい。
 つまりは、僕は、怪我、最悪の場合死という局面を迎えざるを得ない、予測可能回避不可能の状態に陥っている。ああ、体力制だったらどんだけ楽なんだろう。僕は今更ながら、ここに生まれてきたことを後悔した。
 んで轢かれた。
 こう、バンパーの部分にガシッと足払いされてフロントガラスにどーんって、もう駄目だこれ。死ぬ。遺体(誤植)。くそ痛い。若干、骨が折れてる臭いし。ああ、死ぬんだ。僕死ぬんだ。ああ、助からない。ああ、助からない。死ぬ。
 つうか、体が痺れているような気がする。ああ、アレか。腕の内側のあの骨を打ったときみたいなことになってんのか。全身ファニーボーン。笑える名前だけど、笑えない状態だ。もし、僕が生きていたら訴訟しにいこう。
 なぜか意識を失いかけてんのに、頭ん中はぐるぐる回る。疑似ドラッグ体験なのかなんだかはわからないけど、とりあえず、饒舌になってるのは確かだ。
 運転手がやっと車から降りた。さっきからウォッシャーとワイパーを駆使して僕をどかそうとしていた、極悪人だ。死刑だ、馬鹿野郎。おかげで背中は濡れているし、ワイパーがさっきから背中でうごめこうとしていて気持ち悪いんだよ。動けない方の身にもなれよ。
 その運転手は僕を抱いた。女ならその優しさに惚れてしまい、この運転手の魔の手に落ちてしまいそうだった。嘘だけど。殺されそうになって恋に落ちるとか、すごい強引な吊り橋効果だな。自作自演も甚だしい。効果なんてたかが知れてる。
 僕は運転手の持ち物である車の車内に連れ込まれた。嫌でも首もとが視界に入る。そこにつけられている高級そうな──だけども、どこかで見たことあるようなネックレスも視界に入る。僕個人の意見としては、自慢されているようで、ものすごくイラっときた。ひがみとか言われてもかまわないさ。ひがみなんだから。
 そうして、運ばれ僕は寝かせられる。そして、走り出して数分後に眠ってしまった。僕の中に、危ない、っつー感覚はまったくもってなかった。

 僕が起きた時には身体中が痛かった。なぜか。それは硬いアスファルトの上に寝かされているからだ。誰だ。僕をここにおいていったのは。酷いじゃないか。
「あの……大丈夫ですか?」
 話しかけられる。そこにいるのは普通の女性だった。顔レベルも、スタイルレベルも普通だった。普通顔のまな板スタイルだった。普通に二十歳越してるだろうし、二十歳でこのまな板っぷりは、もう色々と諦めるしかない。でも、一応応援しておこう。ガンバレ。
 それはともかく僕は応対しなければならない。声は出るだろうか。「──大丈夫です」普通に出た。でないと思ってものすごく力んでいたから、妙な間ができてしまった。
 その女性は僕の手を引き起こしてくれた。「ありがとうございます」と一応お礼を言っておく。女性は「良いですよ」とユアウェルカムしてくれた。ありがたい。
 一応確認のために身体を動かしてみる。身体中の関節がボキボキ鳴る。こんなに重厚な関節の音があっただろうか。いや、ない。あったとしても意味がない。それはともかく、身体の方に異常はない。多分、痣程度の怪我だったのだろう。良かった。僕は死なない。
 一段落したし、僕も帰るか。「ありがとうございました」「いや、別に良いですよー」そんな会話をすると、僕の目に一筋の光が入ってきた。それはネックレスに街灯から放たれた光が反射したものだった。金属アレルギーで死ねば良いのに。僕はそんなことを思いながら、歩き出した。
 ここはどこだかわからないが、適当に歩いていれば大通りに出るだろう。多少時間がかかっても、安全な道筋を選ぶべきだと僕は思う。
 そして、今更だがこんなことを思った。
 あれ──?

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